(以下は説明用の参考情報で、予告なく変更する場合があります。最新情報はお問合せ下さい。)

超臨界流体 超臨界二酸化炭素(CO2)利用技術


超臨界 LIVE配信 セミナーの案内  2024年12月3日(火曜) 13時30分 ~ 16時30分  [ ZOOM オンラインセミナー ]

 「食材・生体適合材から太陽電池・半導体分野などでの高機能素材の創出手段」と称してオンラインセミナー(有料)を開催します (予定)。  ご興味のある方は、
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 タイトル:超臨界二酸化炭素(CO₂)と工業的利用 ~基礎から適用技術の実際まで~ 何ができ何が必要か?

スポーツフットウェアの世界的企業ナイキ社NIKEが、”製造革命”:「アスリートと地球環境の両方に貢献する」ためと称し、自然溶媒の超臨界二酸化炭素による新規染色技術 “ColorDry” を台湾で実用化展開したと発表し、アディタス社、イケア社も展開しています。
 新規高機能素材の創出を目的とした研究開発が、食品・医薬品・生体適合性分野、導電性付与・太陽電池・半導体なども含め樹脂・無機物・金属などの幅広い産業素材分野を対象に行われています。自然溶媒で環境に優しいユニークな超臨界CO₂流体の基礎特性と特異性を紹介し、海外で進んでいる実用化事例も含め、利用・適用分野を俯瞰します。神戸製鋼グループでの25年以上のプロセス開発・実用化開発での蓄積から、具体的な自社開発・適用事例を示し、実践経験に基づいた工業的利用時のプロセス開発の実際とポイントを紹介すると共に、新しい高機能素材創出のシーズ・ヒントを紹介します。
 ホームページで紹介している内容も含め、約三千倍のスケールアップ設計・プロセス実証・商業化の経験を踏まえ、実用化・工業化するために必要な構成技術、チェック項目に言及し、超臨界CO₂で何ができるか、何が必要かを紹介します。

    ・高機能素材創出のための新規技術を探している方(食材、高分子材、化成品、無機材 他)     こちらを参照下さい
・新たな機能・付加価値を付与する技術を探している方(生体適合、導電、ホール材、コンポジット 他)
・環境負荷低減、脱有機溶媒化を検討している方(NIKE社推進の無水染色、皮革なめし 他)
・超臨界二酸化炭素とは何か、何ができるのか知りたい方 (自然界に多量に存在するユニークな溶媒)
・超臨界二酸化炭素の研究・開発を検討・推進している方(「想定外」でないプロセス構築 他)

超臨界流体 / 超臨界CO₂とは


環境負荷低減、脱有機溶媒化などに貢献可能な新しい流体
「溶媒は液体である」という溶媒に対する従来の固定概念を打破するユニークな溶媒
超臨界流体 / 超臨界CO₂とは
 気体と液体が共存できる限界の温度(31℃)・圧力(7.4MPaA)(臨界点)を超えた状態にあり、通常の気体、液体とは異なる性質を示すユニークな流体です。 この超臨界流体は、どこにでも忍び込む気体の性質(拡散性)と、成分を溶かし出す液体の性質(溶解性)を持ち、且つ、その物性を連続して大幅に変化できる特長を持っています。
 このため、二酸化炭素を超臨界流体として使用すれば、化学、食品分野などでの有機溶媒の代替としても利用でき、人にやさしく、環境にやさしい技術として注目を浴びています。

超臨界流体 / 超臨界CO₂の基本物性と特色
1) 物性値の制御が可能
圧力・温度を僅かに調節するだけで、密度(溶解性)、粘度(拡散性)等の物性値を大幅に変化させ、又、制御することができます。
同様に誘電率(極性の高低指標)や溶解度パラメーター (SP値:物質間の親和性の尺度)も変化します。この性質とエタノール等との相溶性を活用し、助剤(エントレーナ、コソルベント、モディファイア)といっしょに使用する例が多いです。無極性流体の超臨界CO₂は、ヘキサンやベンゼンとSP値が 同じ領域にあり、助剤も含めた溶媒極性等の制御により、如何にCO₂流体を使いこなすかがプロセス成立の重要なキーポイントの一つとなります。
2) 密度が大きく、低粘度、高拡散性の流体
密度が液体に近く、物を溶解する能力があり、粘度・拡散係数が気体に近いため、微細構造物にも浸透して行き、特定成分の抽出、含浸させる流体として使用することができます。

分子量 44.009 g/mol by IUPAC
臨界圧力 7.3825 MPa(a) by IUPAC
臨界温度 304.21 K (31.06℃) by IUPAC
臨界密度 466.1 kg/m³ by IUPAC
融点 216.6 K
沸点 194.7 K
臨界圧縮係数 0.274

IUPAC:International Union of Pure and Applied Chemistry, International
Thermodynamic Tables of the Fluid State:Carbon Dioxide

3) 界面張力フリーの実現
毛管力(界面張力)が生じない乾燥が可能で、微細構造物を壊さずに乾燥させることができます。
4) 分離、回収が容易
圧力・温度を僅かに調節しただけで溶解度が大幅に変化するため、効率の良い分離が可能で、溶媒の循環使用によるランニングコストの低減が可能です。
5) 環境にやさしい安全な溶媒
溶媒として化学的に不活性で、 常温操作が可能なため、熱に弱い物質の取扱いが容易となり、食品に対しても安全で、安価であり、取扱いも容易です。

◎溶媒特性として、超臨界CO₂と超臨界水の特長/利点 ⇒ 応用技術・適用分野と欠点/デメリットを下図に整理しています。

超臨界二酸化炭素(CO2)の物性表


左表は説明用に代表例を記載したものでGas/ Super- critical/Liquidに物理的な相境界などは存在しませんのでご注意下さい。溶解性は液的で、拡散性はガス的な性質を説明しようとしています。

超臨界二酸化炭素(CO2)の特性図
超臨界CO2の密度図
密度が温度と圧力で100 ~
1,000kg/㎥以上に変化します。
このため、用途に応じて密度、温度・圧力を選定することになります。
超臨界流体 / 超臨界CO₂の特異性と特性このページのトップへ
超臨界流体の歴史

 超臨界流体は、圧力と温度を上げる事により、臨界点近傍に近づけると、液体と気体の両特性が大きく変化します。臨界点以上では、液体・気体の相が無くなりますが、液相の臨界点以下の亜臨界状態でも、特異性を示します。
 左図は、超臨界圧8.0MPaにおけるCO₂温度に対する各種物性値を示し、比較的狭い温度領域で急激にかつ連続的に液体的な状態からガス的な状態へ変化する様子を示しています。これは、臨界圧力(7.38MPa)より低い圧力域にみられる飽和域の名残と考えられます。 擬臨界温度(定圧比熱が極大値をとる温度)の近辺で物性値が大きく変化し、例えば、自然冷媒としてのCO₂カーエアコンの熱伝導率は擬臨界温度でピークを示すため、これを配慮した熱交換器設計が必要になります。
 超臨界流体、特に臨界点近傍での特異な物性として、以下が挙げれます。

・反応速度に極大が生じる・音速が極小となる
・臨界点で表面張力や蒸発潜熱が 0 となる・高密度、低粘性、高拡散性を有する
・相互拡散係数が減少する・大きな溶解度差が得られる
・熱物性値(熱容量、熱伝導度、粘度)にピークが生じる

 また、代表的な物性に示す例えば定圧比熱は上記擬臨界温度と関連しますが、臨界圧から10MPa前後の間で大きく変化し、プロセスや装置を律速する場合があります。天然物油脂(抽出page)エタノール等の物資は、超臨界CO₂に相溶(2種類又は多種類の物質が相互に親和性を有し、溶液又は混和物を形成)になる条件があり、この条件を有効に活用することが重要です。 更に、他の溶媒と比較し、粘度表面張力が非常に小さく、自己拡散係数が大きため、細孔内等への拡散が速く、超臨界状態での乾燥時に界面張力を働かせずに処理が可能になります。


超臨界流体 / 超臨界CO₂の適用・応用分野
超臨界二酸化炭素の対象物別適用分野の例
   適用例(表):別ページへ

  超臨界二酸化炭素(CO2)による半導体分野での微細構造体の乾燥例
 半導体分野での微細構造体の乾燥例

 グリーン・ケミカル・プロセッシング、環境負荷低減、脱有機溶媒などの社会要請を受け、特に環境に優しい二酸化炭素を溶媒として用いた超臨界CO₂の用途研究・開発が世界的に活発に行われています。
その適用・応用分野の一例を以下に紹介します。 詳細は  ⇒⇒   ・適用分野とプロセス、 ⇒ 右適用例(表)
抽 出 1) 有効成分抽出
種子等からの香料・色素の抽出 他
2) 不純物除去
食品からの農薬除去、樹脂(ポリマー)からの低分子量不純物(揮発性残留物)除去、洗浄 他
乾 燥 微細構造体/多孔質材料等の界面張力フリー乾燥⇒ 参考例:右写真
表面制御 有機高分子への無機/有機物資の含浸・注入・表面加飾(機能性付与)、染色 他
微粒子 顔料・化粧品・医薬品(DDS)の微粒子・マイクロカプセル 他
滅菌/殺菌 液体食品、繊維 他

環境に優しい超臨界流体の歴史このページのトップへ
超臨界流体の歴史
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  【超臨界流体の歴史】

 物質は、その固有の臨界点(気体と液体が共存できる限界の温度・圧力)を超えた条件におかれたとき“超臨界流体”となり、その物質が気体・液体の状態のときとは異なるユニークな性質を示します。そのユニークな超臨界流体の歴史は古く、 1822年にその存在がフランスで発見されています。そして、1978年にドイツのBremenでコーヒー豆からの超臨界CO₂脱カフェイン、1982年には同じくドイツで、ビール用超臨界CO₂ホップ抽出が実用化され、日本では、1984年に香料抽出が実用化されています。
 一方、超臨界二酸化炭素の日本国内での研究開発は、1985年に通産省超臨界CO₂アルコール濃縮プロジェクトが開始され、神戸製鋼も参画、1987年には化学工学会に「超臨界流体高度利用研究会」 が発足し、1988年には、第一回SCF国際会議 International Symposium on Supercritical Fluids (ISSF)が開催されました。それ以降の詳細は左図(当社外)を参照下さい。

超臨界流体 / 超臨界CO₂の代表的な物性値と相平衡このページのトップへ

ページ内リンク
モリエル線図密度 / 粘度
熱伝導度 / 定圧比熱自己拡散係数 / 表面張力
CO₂-水-エタノール3成分系平衡図 / CO₂-水平衡図
エタノール溶解度 / 溶解度パラメータ / 誘電率
CO₂-メタノール、-IPA / ・アルコール系2成分系臨界点


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  【モリエル線図の使い方】

 超臨界CO₂の大きな特徴である「圧力や温度の変化に対して、物性値が大きく変化する」ことを示す代表的な物性値を以下に紹介します。 又、抽出で可溶成分を増大させる目的等で溶媒(エントレーナ、コソルベント、モディファイア)を使用しますが、その選定、使用条件がプロセス成立に非常に重要な因子になります。


モリエル線図
  (Clickで拡大します)
  【モリエル線図】
 左図 モリエル線図(p-h線図、圧力-比エンタルピー線図)は、縦軸に圧力、横軸にエンタルピー(CO₂の熱量)を取ったもので、超臨界CO₂サイクルでのCO₂の状態を表せます。操作条件の各種状態でのCO₂の状態を1枚の線図で描く事により、 各部の状態や数値を知り、また、その数値を使用して熱量計算や運転状態の判断に活用する事ができる便利な線図です。モリエル線図の使い方は、 こちらを参照下さい
超臨界二酸化炭素の密度

  (Clickで拡大します)
  【超臨界二酸化炭素の密度】
超臨界二酸化炭素の粘度:Clickで当社外の詳細粘度図へジャンプします!
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【超臨界二酸化炭素の粘度】
他の溶媒の粘度
エタノール0.7
0.55
ベンゼン0.44
メタノール0.43
ヘキサン0.24
 @ 50℃ [MPa・s]

超臨界二酸化炭素の熱伝導度

【超臨界二酸化炭素の熱伝導度】
超臨界二酸化炭素の定圧比熱:Clickで当社外の詳細比熱図へジャンプします!
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【超臨界二酸化炭素の定圧比熱】

超臨界二酸化炭素の自己拡散係数:Clickで当社外の詳細拡散係数へジャンプします!
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【超臨界二酸化炭素の自己拡散係数】
超臨界二酸化炭素の表面張力
【超臨界二酸化炭素の表面張力】

超臨界二酸化炭素、水、エタノール三成分系気液平衡
【超臨界二酸化炭素、水、エタノール三成分系気液平衡】
超臨界二酸化炭素と水の平衡:Clickで当社外の詳細平衡図へジャンプします!
(Clickで当社外の詳細平衡図へジャンプします!) 社外リンク

【超臨界二酸化炭素と水の気液平衡】

超臨界二酸化炭素中のエタノール溶解度
【超臨界二酸化炭素中のエタノール溶解度】
超臨界二酸化炭素の溶解度パラメータ(物質間の親和性の尺度)
【溶解度パラメータ】
超臨界二酸化炭素の誘電率
【誘電率】
他の溶媒の誘電率:水 80、エタノール 24、ベンゼン 2.3、ヘキサン 1.8

アルコール(メタノール、イソプロパノール:IPA)と超臨界CO2の二成分相平衡
【アルコール(メタノール、イソプロパノール:IPA)と
CO₂の二成分相平衡】
超臨界二酸化炭素二成分混合物の臨界点
【二成分混合物の臨界点(98mol%-CO₂時)】

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