産業用ガス、化成品

アルゴン(液化アルゴン・アルゴンガス・Ar・argon、CAS:7440–37–1)

  • 常温常圧で無色無臭の気体、希ガスの中では最も空気中での存在比が大きく、乾燥空気を構成する物質では第2位の酸素の 20.93% についで第3位の 0.93%で、二酸化炭素0.039%より多く大気中に含まれます。空気中のアルゴンの存在比が希ガス中最も大きいのは、自然界すなわち岩石中に存在していたカリウム40の一部 (11%) が電子捕獲によってアルゴン40となったためです。原子番号は18の1原子分子、分子量は39.95 g/mol。周期表において第18族元素(希ガス)かつ第3周期元素に属します。

  • ラムゼーとレイリーは、大気中の窒素を赤熱したマグネシウムに通したところ、残った気体が純粋な窒素に比べて重いことを発見しました。分光分析の結果、これが新元素だということに気づき、何ものとも反応しないことからギリシャ語の「なまけもの」を意味するアルゴンと名付けました。このように重さが異なるのがわかるのは、アルゴンが大気中に多く含まれているからです。https://www.chem-station.com/elements/elements-all/2016/10/argon.html

  • アルゴンは、語源であるギリシャ語の「怠惰な」「なまけもの」の意味にあるように、常温では化学的に不活性で、「他の物質と反応を起こさない化学的に安定したガス」という不活性な物性を持っています。この物性を活かして、工業用途ではステンレスをはじめとする金属精錬やアーク溶接、半導体基板材料であるシリコンウェハーの製造などに使われています。不活性な物性を持つガスには、窒素もありますが大気中に含まれる量が、窒素に比べ圧倒的に少ないアルゴンは、より付加価値の高い不活性ガスとして使い分けられています。

  • アルゴンガスは空気よりも熱を伝え難い性質を持ち、空気より比重が重く動き難い性質も持っているため、複層ガラスに充填するとの断熱性能が向上し、対流が起こるのを抑え、ガラスの断熱性能が向上します。電球や蛍光灯の封入ガスとして利用されており、高熱や他の元素と反応しない不活性なガスで、人体には無害で、熱伝導率の低い気体です。不活性ガスとして、容器内等を希釈する場合に必要なアルゴンガスの量はこちらを参照下さい。使用後の排ガスからArを回収して再利用される場合があります。
希ガス
2
He
Helium
4.0026
10
Ne
Neon
20.180
18
Ar
Argon
39.948
36
Kr
Krypton
83.798
54
Xe
Xenon
131.29
86
Rn
Radon
222.02
 
外観
気体:無色・無臭。 液体:無色・透明。

容器(ボンベ)の色は ねずみ色 です。基本的な物性ここを参照下さい。

  • アルゴンは、空気をマイナス200℃近い極低温まで冷却し、空気の主成分である窒素、酸素との沸点の差を利用して採り出す「深冷空気分離法」で製造できるため、「空気分離ガス」と呼ばれています。アルゴンは空気中にわずかしか含まれていないため、一般的には大型装置で酸素や窒素を製造する際に、アルゴンを併産することになります。

アルゴンガスの用途 : さまざまな市場で使用されているArガス

鉄鋼・非鉄金属・冶金 市場 溶接 市場 半導体 市場 封入 市場 分析 市場 金属成形 市場
製鋼:取鍋への吹き込みやイオウなどの不純物を除去する真空脱ガスとして使用されています。ステンレスなどの特殊鋼製錬では、脱炭のための雰囲気ガスとして用いられます。
製錬:チタンや純度の高い単結晶シリコンなどの製錬には、まったく他の物質とは反応しないアルゴンを雰囲気ガスとして用いて、酸化・窒化を防止しています。また、銅の連続鋳造工程中では、溶銅表面を大気に触れないようにするシールドガスとして溶銅の酸化、窒化防止に役立っています。
アルミニウム、ステンレス鋼などの溶接時には、溶接表面をアルゴンでシールドすることにより酸化・窒化を防ぐとともに溶接面を美しく保ちます。 半導体の製造時、スパッタリング用のガスとして、あるいはCVDなどの工程でバランスガスやキャリアガスとして用いられています。 水銀灯、蛍光灯、電球、真空管等の封入ガスとして使用されており、白熱電球では、フィラメントの蒸発を抑え、熱拡散を防いで製品寿命を延ばします。蛍光灯はアルゴンと水銀の持つ紫外部特有のスペクトルを蛍光塗料で可視光線としたものです。 ICP(誘導結合プラズマ)のプラズマ用ガスや、クロマトグラフのキャリアガスとして熱伝導率の小さいアルゴンは、熱伝導率の大きいヘリウムや水素の分析をするのに適しています。 高温、高圧下でガスを圧力媒体として、金属、合金、セラミックスなどを成形する熱間十方加圧法(HIP)では、原料の酸化・窒化を防ぐためにアルゴンが用いられます。HIP装置の詳細は、こちらを 参照下さい。
食品
ワインの酸化防止、但し、海外での例です・・

アルゴン 封入イメージ

 欧米ではワインの酸化防止の為にアルゴンガスが使用されています。 窒素ガスに比べてアルゴンガスの方が高価ですが、不活性度(他の物質と反応しない性質)は窒素よりも高く、空気よりも重い(比重 1.38)ので、 窒素よりも空気と入れ替わ速度が遅く、なおかつ、重いので下に溜まりやすく、他のガスを追い出しやすい性質を持っています。 窒素ガス(比重 0.97)は、空気よりほんの僅かに軽いため、窒素ガスをワインビンの中に入れても、蓋を閉めないで放置すると 軽い窒素ガスが瓶中から拡散して放出され、重い酸素ガス(比重 1.11)が瓶内に拡散・侵入し、簡単にもとの酸素濃度に戻ってしまうと言われています。 窒素ガスの場合、ワイン瓶内に注入する勢いで空気/酸素を置換するのに対し、 アルゴンは自らの重みを使って置換しますので、より信頼性が高くなります。 このため、高価なワインで、酸化して味を劣化させたくない場合にはアルゴンが良く使われます。  日本ではアルゴンガスが食品添加物として現状認められていないので、食品にはあまり利用されていません。

アルゴン・Arの状態図 (温度・圧力線図)

アルゴンの温度-圧力線図

 状態図・相図は、アルゴン・Arの相(固体・液体・気体)と熱力学的な状態量の関係を表したものです。物資がある相から他の相に変わることを相転移と言います。

 固体が液体に変わる現象が溶融、融解で、その相変化を示した曲線を溶融線、融解線と言います。
 液体が気体に変わる現象が沸騰、その逆が凝縮で、この温度が沸点で、その相変化を示した曲線を沸騰線、凝縮線、或いは、蒸気圧曲線と言います。
 固体が液体にならずにそのまま気体になる現象が昇華であり、この時の温度が昇華点で、昇華線と言います。

 アルゴン・Arの三重点(固体・液体・気体の状態が同時に存在する) は、-189℃(84 K)、0.069MPa(abs)です。臨界点(critical point、気体と液体が共存できる限界の温度・圧力、これを超えた状態で通常の気体、液体とは異なる性質を示すユニークな流体は超臨界と言う)は、-122.5℃(150.7 K、臨界温度Tc)、4.898MPa(abs、臨界圧力Pc)です。

供給形態(ボンベ、LGC/ELF、ローリー/貯蔵タンク)

 アルゴンガス・液 Arの供給形態・荷姿は、通常、以下のように三種類あります。

  1. (1) 一般容器(気体充填用)

     右表に一般容器のボンベを示します。もっとも普及しているボンベは、7,000 Liter = 7 m3のものです。14.7MPa(g)(約150気圧)で気体状態で充填されたアルゴンボンベの重さは約64kgになり、かなり重いため、取り扱いには注意が必要です。

Ar 充填量 サイズ(概略) 空重量 内容積
7,000 Liter 232mmφ x 1,365mm高さ 52kg 46.7L
1,500Liter 139.8mmφ x 965mm高さ 11.5kg 10.2L
500Liter 101mmφ x 645mm高さ 6.0kg 3.4L

  1. (2) 極低温容器(液体充填用)

     可搬式液化ガス(極低温容器、LGC:Liquid Gas Container、ELF: Evaporator Liquid Flask エルフとも呼ばれる)は、ステンレス製の内槽とステンレス製又は高張力鋼製の外槽との間を液化ガスの蒸発を極小にする真空断熱した魔法瓶型の容器です。
     176L容器では、127m3のアルゴンが充填されているため、一般容器と比較し、18倍以上のアルゴンが入っています。このため、容器交換の頻度が少なくて済み、ガスも安価になります。 但し、外部からの侵入熱により容器内の圧力が徐々に上昇しやすく、内槽安全弁、破壊式安全弁が付属しており、安全弁の作動圧を超えると内部のガスが放出されます。

Ar 充填量 サイズ(概略) 空重量 内容積 供給量
127m3
(202kg)
508mmφ x
1,580mm高さ
106kg 176L 最大25m3/Hr
360m3
(569kg)
859mmφ x
1,630mm高さ
315kg 465L 20~60m3/Hr

  1. (3) 貯槽タンク(CE:コールドエバポレーター)

     アルゴンを大量に使用する場合は、真空断熱の貯槽を使用します。貯蔵量は、3.6~22ton、2.6~16m3、最高使用圧力0.95 MPa(g)が一般的です。製造工場よりタンクローリー車(充填量8ton前後)で供給されます。
     ボンベ、容器、タンク類は密閉容器のため、アルゴンの使用により容器内の圧力が低下し続けます。このため、貯槽タンクには、通常容器下に加圧蒸発器(大気温で加温)が設置され、貯槽上部よりガスにて加圧し、貯槽内の圧力を一定に保ちます。一方、使用しない場合は、真空断熱と言えども大気からの侵入熱で貯槽内の圧力は徐々に上昇し、0.5%/日程度で自然蒸発により大気へ消失します。

Ar 充填量 サイズ
(概略:外径x高さ)
空重量 内容積 貯蔵容積 設計圧
3,648kg 1,712mmφx3,659mm 2,300kg 2,900L 2,610L 1.0MPa
6,218kg 1,712mmφx5,197mm 3,350kg 4,942L 4,447L 1.0MPa
12,248kg 2,218mmφx5,489mm 6,200kg 9,735L 8,761L 1.0MPa
22,450kg 2,218mmφx8,676mm 9,800kg 17,843L 16,058L 0.97MPa

ボンベの刻印

  1. (1)容器所有者記号(例:H071)
  2. (2)充填ガスの種類(例:N2、O2、Ar、CO2等)
  3. (3)容器記号番号(例:ABC23456)
  4. (4)内容積(V:単位リットル)
  5. (5)容器重量(W:単位キログラム)(弁、キャップを含まない)
  6. (6)耐圧試験圧力(TP:単位MPa(g))
  7. (7)最高充填圧力(FP:単位MPa(g))

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